言語聴覚士は、「コミュニケーション障害」を持つ人に対して、その人の自立と社会参加を支援しています。
「コミュニケーション障害」の内容は多岐にわたり、ことばの障害、聞こえの障害、発音の障害、また、摂食・嚥下(えんげ=飲み込むこと)の障害や、認知症・記憶障害などの高次脳機能障害にも対応します。
言語聴覚士によるリハビリテーションは機能回復に向けた訓練・指導とともに、患者さんを心理的にサポートすることも大切な仕事です。
また、医師・歯科医師・看護師・理学療法士・作業療法士など医療専門職、ケースワーカー・介護福祉士・介護援助専門員などの保健・福祉専門職、教育、心理専門職などと連携し、「チーム」の一員として情報を共有し協力して支援にあたります。
言語聴覚士の職能団体である一般社団法人日本言語聴覚士協会の会員データによると、言語聴覚士の男女比は、女性が約8割、男性が約2割を占めています。
年齢構成比は、20代が全体の約3割、30代が全体の約4割を占めており、若い人が多いことが分かります。
さらに詳しいデータは、一般社団法人 日本言語聴覚士協会のWebサイト「会員動向ページ」をご覧ください。
【日本言語聴覚士協会Webサイト】http://www.jaslht.or.jp/trend.html
医療従事者の制服と言うと、医師が来ている長袖のコートのような白衣や、看護師が着ている白衣をイメージしますが、言語聴覚士は「ケーシー型」と呼ばれる、半袖で動きやすさを重視した上下セパレートの白衣を着用しています。
本Webサイトのトップページや「言語聴覚士の一日に密着」のページに登場する女性が着ているのが「ケーシー型」の白衣で、これは1960年代のテレビドラマ「ベン・ケーシー」の主人公(脳外科医)が着用していた白衣に由来しています。
また、最近はポロシャツ等を導入している施設もあります。
言語聴覚士は、生身の人間を相手に仕事をするので、人間そのものに興味や関心がある人、相手に共感しようとする心を持った人が向いています。
また、言語聴覚障害の学問・技術は日々発展しているため、資格取得後も生涯学び続ける意欲を持ち続けることが大事です。
その他、医療や保健、福祉、教育などあらゆるジャンルの職種の人と連携をして支援を行うことから、「協調性」を持つことも大事です。
言語聴覚士が仕事を通じて得られるやりがいとして1番大きいのは、やはり「患者さんの回復を感じた時」や「患者さんの家族から喜びの声をもらった時」という声を多く聞きます。コミュニケーション障害は、一度や二度の訓練で急激に症状が改善したり、問題がすぐに解決することは少なく、回復や改善までの道のりは長くなることが多いものです。
相手のペースに合わせて根気強く訓練を行っていく中で、なかなか症状が改善しない時には「大変さ」を感じることもあると思いますが、だからこそ、患者さんからの良い反応や機能回復の兆候が見えた時の「喜び」や「やりがい」は非常に大きく、言語聴覚士の原動力になっています。
言語聴覚士は女性が多い職種ですが、産前・産後休暇や育児休暇を活用したり、また託児所を併設している施設も多いことから、出産後も仕事を続けることが可能です。
また、言語聴覚士は国家資格であるため、一時的に職を離れる時期があっても再就職は比較的容易であり、これまでの経験を次のステージに活かせるのも特徴です。
また、リハビリは夜間にはしない為、夜勤はありません。
言語聴覚士の職能団体である、一般社団法人 日本言語聴覚士協会では会員の約8割が女性のため、女性向きの仕事に思われがちですが、 そんなことは全くありません。
多くの男性がスペシャリストとして活躍しています。
言語聴覚士国家試験は毎年1回、2月中旬に行われています。開催場所は、北海道、東京都、愛知県、大阪府、広島県及び福岡県の全国6都道府県です。
試験方法は5肢択一式の筆記試験で、試験科目は、基礎医学、臨床医学、臨床歯科医学、音声・言語・聴覚医学、心理学、音声・言語学、社会福祉・教育、言語聴覚障害学総論、失語・高次脳機能障害学、言語発達障害学、発声発語・嚥下障害学及び聴覚障害学です。H25年度の受験料は35,700円でした。
言語聴覚士国家試験は毎年1回、2月中旬に行われます。試験の内容は5肢択一式の筆記試験です。
午前中100問、午後100問の計200問が出題されます。
合格基準は例年120点以上です。試験問題は医学総論や解剖学、生理学などの基礎科目から100問、失語症や吃音、聴覚障害など専門科目から100問が出題され、幅広い範囲から出題されます。
全体の合格率は60%台と低く言語聴覚士は難しいという印象を受けますが、これは既卒者を含めた合格率です。
養成校の新卒者の合格率は80%を超えており、養成校でしっかりと授業の内容を修得していれば合格できる状況であり、それ程の難関ではありません。
また、各養成校では最終学年になると国家試験合格に向けた準備や対応が行われます。
言語聴覚士の数は毎年増えていますが、それ以上に需要があり、数が不足しているというのが現状です。需要にともなって求人数も年々増加しており、そのため就職活動を行えば、就職先に困るということはあまり無いようです。
なお、養成校(専門学校・大学)に通う学生の場合、就職活動は一般的に最終学年の秋ごろから行い、翌年の1月までに就職先が決まることが多いようです。
言語聴覚士の国家試験は毎年2月に行われ、合格発表は3月に行われますので、就職は資格が取れることが前提となることがほとんどで、国家試験が不合格だと内定取り消しとなります。就職活動中もしっかり試験勉強に励みましょう。
言語聴覚士の給与については、勤務先施設の規模や種類、地域、常勤・非常勤などの働き方によってばらつきがあり、 一概に「平均年収は〇〇〇円」というように算出することができません。
自分が将来働く姿を想像し、勤務先は「医療機関」なのか「介護施設」なのか、働き方は「常勤」が良いのか「非常勤」が良いのかを考えて、同じような条件だと給与はいくらくらいなのか、Webサイト等で公開されている求人情報を参考として見てみるのも良いでしょう。
高齢化が進む社会においては、老化に伴う老人性難聴や摂食・嚥下(えんげ=食べ物を飲み込むこと)が困難になるといった障害や脳血管疾患による言語障害を持つ人の数が増えていきます。つまり、それだけ言語聴覚士を必要としている人が増えている、ということです。近年では言語聴覚士の数が足りない状態になっており、求人数も年々増加していくことが予想されます。
現在4年制大学の3年生~4年生なのでしたら、まずは4年制大学を卒業して、 2年制の大学・大学院専攻科または専修学校へ入学することが1番の近道です。
(2年制の養成校は、入学条件が「4大卒以上」となっている場合がほとんどです。)
養成校卒業で国家試験の受験資格が得られますので、ストレートで国家試験に合格できるよう2年の養成期間内でしっかり勉強しましょう。
言語聴覚士になるための専修学校(養成校)には、昼夜間部2年制や昼間部3年制など、さまざまなコースが用意されており、さらに短大や大学なども含めると、学費も学校の形態やコースによってまちまちです。
コース内容・カリキュラムや学費など、詳しい情報につきましては、各校のWEBサイトでご確認いただくか、直接学校へお問い合わせください。
言語聴覚士は子供からお年寄りまでさまざまな年代の患者さんと接する職業です。
日ごろからさまざまな人と接し、コミュニケーションをとることに慣れておくと良いでしょう。
また、色々なことに興味や関心を持って感動する体験を増やし、自分自身を豊かにすることが大事です。
読書や旅行、映画鑑賞などもオススメです。
また、若いうちから新聞を読む癖をつけておくと、異世代の方と話をするのに重要な情報源となってくれると思います。
「平日の夜間」と「土曜日の日中」に授業を行っている学校もあるので、働きながら学んで資格を取得することも可能です。
なお、夜間部への入学にあたっては、「4年制大学を卒業していること」等の条件が定められている場合がありますので、詳しくは各専門学校へお問い合わせください。
30代で資格取得を目指し養成校に通うことも珍しくありません。
言語聴覚士として働く上で、これまで社会で働いてきた経験は現場で大いに活かされることでしょう。