めざせ!ST(言語聴覚士)話す、聞く、食べるのスペシャリスト

言語聴覚士インタビュー

言語聴覚士インタビュー

できないことに目を向けるのではなく、できること得意なことを見つけ、後押しする

星本 育江 一般社団法人栄福祉会 就労移行支援ソレイユ
星本 育江

就労先に合わせた知識・能力向上を訓練する

私はこれまで言語聴覚士として急性期・回復期の入院病棟と外来に12年、老人保健施設・通所介護に5年、勤務してきました。そして、現在では就労移行支援の施設「栄福祉会」に勤務しています。

「栄福祉会」は、脳梗塞や交通事故などによって、脳に損傷を受けた後の高次脳機能障害(記憶・思考・行為・言語・注意)や、手足の麻痺をはじめ、さまざまな原因で生活障害が生じた方に対して、“仕事”をきっかけに生活を立て直してもらう“場”を提供するために設立されました。

私は同施設の就労移行支援事業所にて生活支援員を担当しております。生活支援員の主な業務は一般企業への就職を目指している障害をお持ちの方を対象に、就労に欠かせない知識・能力向上を訓練することです。

就労のための知識・能力は、その方が目指している業種によって異なります。
たとえば、事務補助を目指している方であれば、ワード、エクセルといったパソコン練習、厨房の食器洗浄を目指している方であれば、施設に併設された作業所内の厨房での練習をします。

就労支援のため、病院に勤務する言語聴覚士と違って、私が協力するスタッフは、市役所職員やハローワーク職員、さらには企業の採用担当者とも連携をとります。

利用者の背中を後押しして一歩前に踏み出すサポート

利用者さんのなかには、就職に一歩踏み出せない方がいらっしゃいますが、そういった方の背中を後押しして、一歩前に足を出すサポートができたときにやりがいを感じますね。
たとえば、脳出血を発症して5年経過して「もう少し歩けるようになってから就職を」とおっしゃっていた方が、サポートによって就職活動に前向きになってくれたり、失語症の方が面接の際に、練習以上に自分の言葉で質問に答えられたりという姿を見ると、感服します。

そしてその姿を見ると、障害がありながらも利用さんが主体的に練習に取り組めているのは、就労という実践的な環境だからこそなのかなと思います。

本人の「したい」「できること」「得意なこと」を活かして雇用先を見つける

病院に勤務していたころに一緒に働いていた医療ソーシャルワーカーからの「本人・家族が家に帰りたいと思ったら帰せない人なんていないのよ」という言葉を大切にしています。

私はこの言葉を「相手の希望に応えるための方法を探すのが専門家」という意味と捉えています。
サービスを提供する私たちが「できない」と思っていても、本人の「したい」という希望を叶える必要があります。なので、「できない」に目を向けるのではなくて、「できること」「得意なこと」を見つけて、それを活かして雇用先を見つけるという心構えを大切にしています。

苦労を感じても上司からの学びで課題と向き合う

障害特性と就労先の物理的・人的環境とがマッチングするか、就職後の必要なサポートを受けられる体制をどう構築するかといったように、さまざまな調整が必要なため、ときに苦労を感じます。ですが、現在の職場には私と同じく言語聴覚士であり就労支援に8年前から携わっている上司がいます。そのため、上司から毎日勉強させてもらい日々の課題と向き合っています。

「苦手」「やりたくない」から逃げ出さない

仕事をしていると、苦手、やりたくないと思ってしまうことが誰しもあると思いますが、このような業務から逃げないように心がけています。

実は私は、人前での発言や話すことに苦手意識があって。ただ、就職してからというもの、会議や学会で発表する機会が多くありました。そのときも、苦手だからといって逃げるのではなく、尊敬する人が発表する姿から学んで実践してきました。

勉強は就職してから続けた

言語聴覚士という仕事を知ったきっかけは、養成校のパンフレットを手にとったことからです。仕事内容を読んで、話す・聴く障害に対するリハビリや、聴覚の検査、声の分析などに興味を持って、養成校に入学しました。

養成校では覚えることが多く、実習が始まると睡眠時間を削って勉強しました。

勉強は養成校を卒業して就職してからも続けましたね。とくに新人時代は毎月勉強会に参加していて、徐々に高次脳機能障害の方の支援に興味を持つようになって。そして30代になってから大学院に進学し、働きながら勉強を続けました。
正直、新人時代は遠くの勉強会にも参加していたため、旅費と研修費にお給料が消えていた印象ですが、苦労よりも楽しさの方が勝ってましたね。

必要なサービスが必要な人まで、まだまだ行き届いていないという印象があります。私が現在携わっている就労支援という仕事は、どのような方が対象になって、どのような手続きを踏んで利用できるかといったサービス自体を知らない方も多くいらっしゃいます。

なので、少しでもこのサービスを必要としている方や支援する方に伝えていくことが今後の目標です。

言語聴覚士としての経験を生かした就職支援を行いたい

病院に勤務していたころ、医療機関を退院した後の高次脳機能障害の方やご家族を対象にしたグループ訓練をボランティアで始めました。私が入院中に関われる期間は短く、反対に利用者さんは退院されてからも長い人生を歩まれます。様々な理由で退院を機に外来の受診にも来なくなってしまう方もいました。

このように、退院した後のサポートに悩まれている方をケアしたく、現在就労支援を行っています。就労支援を行うようになって気づいたのは、障害者雇用の求人は多くても、失語のある方や高次脳機能障害のある方が、必要なサポートを受けて働ける職場ばかりではないということです。

そのため、言語聴覚士としての知識を生かしながら、失語のある方、高次脳機能障害のある方が就職し、働き続けられるようサポートできる支援員となっていきたいです。

ある一日のスケジュール

Schedule
  • 09:00
    出勤

    朝礼・ミーティング
    利用者様・スタッフのスケジュール確認、メールチェック、電話連絡等

  • 09:30~
    講義・訓練

    利用者様の目指す職種に合わせて、その方に必要な作業指示を伝えて支援を行う

  • 12:00~
    休憩
  • 13:00~
    卒業生の就職先へ訪問

    企業の担当者の方と面談し、就職後の様子を確認。実際のお仕事の様子も見学させていただく
    就職してから半年間は定期的に訪問や電話等で連絡を取り合い、必要なサポートを行う

  • 14:00~
    就職活動支援

    ハロワーク掲載の求人票の検索、ハローワークへの同行、履歴書の添削、面接練習等

  • 15:00
    退勤

    事務連絡、メールチェック等を行い退勤
    担当者会議等が入った場合は残業することもあるが、パートタイマーのため基本は15:00に退勤する