【公式】めざせ!ST(言語聴覚士)

言語聴覚士インタビュー

言語聴覚士インタビュー

コミュニケーション支援を通じて、子どものコミュニティが保障される町の文化を創りたい

横山 真司 NPO法人オルケスタ
教育 小児 施設リハ
横山 真司

「魔法使い」との出会いと、友人がくれた勇気

私がSTという職業を知ったのは、20代半ばでガイドヘルパーをしていた頃です。当時、数年間関わっていた言葉が出ない子どもが、ある日突然「あえいおう」と発声し始めたのです。保護者の方から「STの訓練を受け始めた」と聞き、子どもに言葉を与える魔法使いのような存在を初めて知りました。

ガイドヘルパーの仕事にやりがいを感じながらも、将来への漠然とした不安を抱えていた私の背中を押してくれたのは、今も一緒に仕事をしている友人の決断でした。「保育士の資格を取りに学校へ行きます」という言葉とともに新しい道へと踏み出していく姿に、大きな刺激を受けたのです。「自分もまだチャレンジできる!」という思いが湧きあがり、これまでの経験を活かしながら、より専門的なアプローチで子どもたちの支援ができるSTという道を目指すことにしました。当時魔法のように感じた一人の子どもの「ことば」と友人の挑戦が、私の人生を変えることになったのです。

こどものミカタ、NPO法人オルケスタの設立

STとして急性期病院の発達外来に携わる中で、大きな課題に直面しました。当時は、自分の診立てには自信がついてきた時期でしたが、家庭や学校、放課後等デイサービスなど、保護者が最も困る日常生活についての相談にほとんど答えることができないという経験をしたのです。また、私の地元である河内長野市近辺から、往復1時間もかけて通院される方が多いという現実にも気がつきました。病院という環境で「先生」として関わることの限界と、地域のニーズを目の当たりにし、身近な場所で提供される日常生活に沿った専門的支援の必要性を強く感じたのです。

この経験から、「こどものミカタ」をキャッチコピーに、NPO法人オルケスタを立ち上げ、児童発達支援・放課後等デイサービス「ぐるぐる」を開設することを決意しました。保育士を中心に、言語聴覚士・作業療法士がそれぞれの専門性を活かしながら協働する体制を整え、なにより子どもたちの日常生活に即した実践的な支援を提供することを目指しています。

子どもと家族に安心を届けるために、セラピストとしてできることを

「ぐるぐる」における支援の特徴は、子どもたち一人ひとりの発達状況に合わせた、きめ細やかなアプローチです。集団療育では、保育士、言語聴覚士、作業療法士が協働し、子どもたちのことば・コミュニケーション、社会性、感覚や運動発達といった専門知識を基に、遊びを通じたアプローチをしています。

一方、個別療育は主に言語聴覚士・作業療法士が担当し、各種検査などで得た評価を基により専門性に特化した活動を提供しています。そうして、療育で得られた診立てを保育所等訪問支援を通じて日常の居場所である施設と共有し、それぞれの現場での支援に活用していただいています。

セラピストと保育士が協働する私たちのアプローチは、保護者アンケートで約8割の方から「大きく不安が軽減した」「不安が軽減した」との回答をいただいています。なにより子どもたちからは「ぐるぐる行きたい!」「楽しい!」という何にも代えがたい評価をいただいており、その楽しさは個々に合った活動を提供している結果だと思っています。

子どもが自ら発達する力を信じ、伝える

STとして子どもたちと関わる中で、私が最も大切にしているのは「主体的な環境との関わりと自己選択・自己決定」の保障です。それができる環境を整えることが、大人の重要な役割だと考えています。

不安と焦燥に押しつぶされそうな保護者や、子どもの日々の行動に困惑している保護者に、その大切さを伝え、理解していただくことは、この仕事で最も難しいと感じる部分かもしれません。保護者の気持ちに寄り添いながら、子どもの発達の現状と未来の可能性について不安が和らぎ少しでも希望を持てるよう、また子育ての支えになれるように伝え方を工夫しています。

「ぐるぐる」では、帰りの挨拶でピアノの伴奏に合わせておかえりの歌を歌います。試行錯誤の毎日で壁にぶつかることも多いですが、この時間に「今日も子どもたちが楽しく過ごしてくれて、そんな環境をスタッフが作ってくれている。そんな場で働くことができて本当に幸せな仕事だな」と感じます。

コミュニケーション×コミュニティ コミュニケーション支援の専門職として

コミュニケーションは、人が、人や社会との繋がり(コミュニティ)を持つためにあると考えています。私にとってのSTという仕事は、子どものコミュニケーションを保護者や地域(幼保こども園、学校、町)と繋ぎ、子どもそれぞれが主体として参加できるコミュニティを創ることです。

地域コミュニティが崩れ、子ども・保護者が孤立し、多くの家族が子育ての難しさに戸惑い、困難を抱えている時代において、コミュニケーション支援の専門職であるSTは、その橋渡しや通訳、支援者として、大きな役割を果たせると考えています。

ある一日のスケジュール

Schedule
  • 09:00
    出勤

    1日のスケジュール、来所するこどもの情報、前日からの申し送りなどを確認します。

  • 10:00~
    集団セッション

    保育士、作業療法士、言語聴覚士が協働して集団セッションを行います。
    この間に、保護者との懇談や訪問支援に出かけたりもします。

  • 15:00~
    個別セッション

    言語聴覚士、作業療法士による個別セッション。

  • 17:00~
    閉所
  • 17:45~
    終礼

    一日の楽しかったこと、新規利用児のこと、支援についてなどの報告。

  • 18:00
    退勤