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言語聴覚士インタビュー

言語聴覚士インタビュー

臨床・研究・講義・地域活動―全てはより良い言語聴覚療法を目指して―

秦 若菜 北里大学医療衛生学部
教育 成人
秦 若菜

言語聴覚士の意義深さに魅了されて

高校生のときに、人の役に立つ仕事に就きたいとの思いで、医療職に興味を抱くようになったことがはじまりでした。さまざまな職種を調べる中で、脳機能障害のある方へリハビリテーションを行うことに魅力を感じ、言語聴覚療法学を専攻しました。学べば学ぶほど、言語聴覚士の仕事の素晴らしさと意義深さに魅了されていきました。

卒業後は病院のリハビリテーション部に約6年間勤務し、主に脳血管障害や神経難病を患う成人の方々に対してリハビリテーションを行ってきました。今は言語聴覚士の養成校の講師となり、学生に対して授業を行ったり、大学院生や他の研究室の先生方とともに研究活動を行ったりしています。失語症、高次脳機能障害や構音障害(発音の障害)、音声障害、音響学に関する講義や実習を担当する傍ら、週に半日程度は大学病院で臨床業務を行う日々です。

病院勤務から研究者になっても、臨床を続ける

病院勤務の頃は、病気や事故による脳障害や、発声・発語・嚥下器官の麻痺に対して、様々にアプローチしながら、言語聴覚療法の対象の方が自分らしく生きていくためのサポートを念頭に従事してきました。

現在は、主に成人吃音者におけるリハビリテーション効果と、その改善要因に関する研究を行っています。吃音とは、話をするときに「きょ、きょ、今日はいい天気」のような音や語の繰り返しや、「・・・ありがとう」のように言葉の最初の音が出しにくくなるなどを主症状とする発話の障害の一つです。多くの場合、幼少期に発症しますが、大人になっても吃音による話しにくさを抱える人は少なくありません。

対象の方にとって、より良い治療方法につながる研究を行いたいという思いで、研究者になってからも臨床は続けています。研究のゴールの先には、関わってきた対象者のみなさんのお顔があります。それぞれに困難を抱える対象の方の苦しさを目の当たりにした経験や、良くなったときに見せてくださった笑顔が私の研究の原動力です。

「言いたいことが伝わる」喜びを共有できる

臨床や研究を続けて22年になります。たくさんの対象の方々に出会い、病気や症状のこと、どのようなお気持ちでリハビリテーションを頑張っておられるのかなど、さまざまなことを教えていただきました。自分の言いたいことを相手に伝えられないもどかしさや辛さは、間近に見ていてもなお想像を絶します。

リハビリテーションは決して楽ばかりではありません。その中で、言えない言葉が言えたとき、伝えたい内容が伝わったとき、対象の方は本当にうれしそうにされるのです。「秦さんには言いたいことがなんでも伝わる」とおっしゃってくださったこともあります。緊張の解けた笑顔で対象の方が喜んでくださるときが、私にとって一番幸せな時間です。

一人でも皆でも地域でも、治療法の向上を目指して

これからも、言語障害やコミュニケーションの障害のある方たちに向けて、より良いリハビリテーションをご提供できるように、研究や臨床を続けていきたいと思っています。

一人で行う研究だけでなく、大学院生や若い言語聴覚士の皆さんとの共同研究も進めていきたいですね。私たち研究者が研究への参加意欲を高め、全国の言語聴覚士たちが臨床的な視点を有しながら、それぞれの立場から実践的な学びを行っていくことが大切だと考えています。

現在、私は神奈川県言語聴覚士会や神経難病リハビリテーション研究会にも所属し、より良いリハビリテーションを提供するための学びあいや環境づくりをお手伝いしています。医療やリハビリテーションの世界は個人一人ひとりの努力はもちろんですが、さまざまな立場のスタッフで共同し合うことが大切です。病院や施設といった枠の中にとどまらず、地域や全国とのつながりを深めていきたいですね。今後もあらゆる職種・立場の方と協力しながら、研究活動や臨床を通して、言語聴覚療法の質の向上に貢献していくつもりです。

お一人お一人の人生を想い、寄り添う言語聴覚士へ

言語聴覚士は、対象の方の人生に深く関わらせていただく職業です。言語聴覚士を目指す学生さんたちには、言語聴覚療法の対象の方々を一番に考えられる言語聴覚士になってほしいですね。病気や障害という観点だけでなく、より大きな視点で対象者お一人お一人の人生を想い、「人」として見つめる力を身に着けてもらいたいと考えています。

特に「コミュニケーション」や「意志の表出」という側面を支援することは、人の尊厳に関わりますし、食事の領域での関わりは、生命の維持や生きる楽しみにも影響します。言語聴覚士の仕事には大きな責任が伴いますが、それ以上に大きなやりがいがあります。対象の方の人生に寄り添いながら、あなたのサポートで、たくさんの方を幸せにして差し上げてください。

ある一日のスケジュール

Schedule
  • 08:40
    出勤・授業前準備
  • 09:00~
    失語・高次脳機能障害学 講義
  • 12:10~
    休憩
  • 13:00~
    学生指導
  • 14:00~
    講義準備・資料作成
  • 15:30~
    研究業務
  • 17:00~
    他施設共同研究のオンラインミーティング
  • 17:50
    終了