言語聴覚士インタビュー
患者さんだけでなく
その家族へも思いを寄せる
池上 陽子
島田療育センター
リハビリテーションではなくハビリテーションという観点
現在、私は島田療育センターで小児領域の言語聴覚療法を行っています。“小児”というと18歳までの患者さんをイメージされがちですが、重症心身障害児の患者さんもいらっしゃるため、18歳以上、場合によっては60歳以上の方へのリハビリも行います。
言語聴覚士がリハビリを担当する患者さんはさまざまです。高齢の方を対象とした場合には、会話や摂食機能回復が目的ですが、重症心身障害児の方の場合、生まれつき機能障害を抱えていらっしゃるので、「“リ”ハビリテーション」ではなく、「ハビリテーション」という観点から、その方の機能の有能化を目指しています。
業務において、主に連携をとるのは、医師、看護師、介護福祉士はもちろんのこと、児童指導員、社会福祉士といった幅広い業種におよびます。そのため、どのスタッフとも意思疎通が図れるよう、密な連携が欠かせません。
命と関わる現場だからこその緊張感と責任感
重症心身障害児として生まれた時から重度の障害を抱えている方と一口にいっても、大人の方もいればお子さんもいますし、みなさん、障害の程度が異なります。なかでも重たい障害を抱えている方の食事指導となると、体調を崩したり誤嚥につながったりする可能性があり、場合によっては命に関わる危険性があります。
ドクターの指示を仰ぎながら、患者さんに適切な指導を行っています。
専門家としての知見が患者さんに還元される
誤嚥の可能性などがある患者さんは、チューブやカテーテルで胃や腸に栄養を送り込む、経管栄養で栄養を摂取しています。なかには生まれた時からずっと経管栄養という方もいらっしゃいます。そういった患者さんであっても、関わりの中で経口摂取できるようになったというケースは、専門家として非常にやりがいと喜びを感じる場面です。
正直、機能回復を目指している方のように、“食の喜びを再確認”して、たくさん食事を摂るといったわけではありませんが、次第に経口摂取に慣れてくる姿、そしてそれを喜ぶ親御さんの姿を見ると、嬉しくなります。
子どものできることが増えていることを実感して欲しい
現在、私が担当しているのが小児領域ということで、患者さんのなかには小さいお子さんがいらっしゃいます。そういったお子さんの場合、どうしても親御さんが他のお子さんと成長を比べてしまうことがあります。言語聴覚士としては他のお子さんと比べるのではなく、自分のお子さんの出来ることが増えていっているという点を実感して欲しいなと思っています。
そのため、外来であれば、お子さんの付添いで来られた親御さんと積極的にコミュニケーションをとるようにしています。
言語聴覚士に興味をもったきっかけ:肢体不自由協会のキャンプ
私は言語聴覚士に興味をもったのは、大学生のときに社会福祉法人 日本肢体不自由児協会主催のキャンプに参加したことがきっかけです。キャンプでは車イスの子も交えて一緒に遊んだり、介助したりと、それまでとは異なる体験ができました。当時は介護に関する特別な知識もなく、教わりながらっていう状況でしたね。
当時は言語聴覚士ではない仕事に就職しましたが、キャンプをきっかけに肢体不自由の友達もできて、遊ぶようになり、徐々に言語聴覚士という仕事へ進んでいきました。
その後、専門学校に入学しましたが、音響学的な理系の授業や医学的な授業は、これまで学ばなかったことで、大変だったなぁと今でも思います。
ただその反面、6週間×2回の実習では言語聴覚士としての業務を体験できたのは、今に活きていると感じます。
保護者支援で家族のケアもできる言語聴覚士に
現在でも親御さんへのケアは心がけていますが、今後はよりそこに注力したいと考えています。専門家として支援をして、お子さんもの成長や保護者の方の安心を支えていけたらいいな、と思っています。
お子さんのことが可愛いなぁとか、一緒の時間が楽しいなぁとか思ってもらえるとうれしいなと感じます。
ある一日のスケジュール
Schedule-
09:00朝礼
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09:20~外来
※日によって、9:20~12:00は「訪問リハビリテーション」の場合もあります。
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10:00~病棟集団活動
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11:00~病棟摂食訓練
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12:00~休憩
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13:00~外来
※日によって、13:00~14:00は「会議」の場合もあります。
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14:00~外来
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15:00~外来
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16:00~外来
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17:00~外来
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17:45退勤
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