言語聴覚士インタビュー
海外協力隊としてベトナムで活動。異国で体感したSTの仕事に欠かせない意識
福﨑 聖子 JICA海外協力隊(ベトナム国)ソンラ省リハビリテーション病院(2022.6-2024.5)/ ハノイリハビリテーション病院(2024.7-)STをめざしたのは、「もっと人の役に立ちたい」という気持ちから
私は高校・大学時代に老人ホームでボランティア活動をしていました。そのとき、食事介助に苦労した経験が、後になって言語聴覚士という仕事に関心を持つきっかけとなります。大学卒業後は12年ほど大阪府庁に勤務していましたが、「もっと直接的に人の役に立つ仕事がしたい」という気持ちが高まり、退職して言語聴覚士の養成校に入学。卒業後は、医療法人に属し、病院や訪問部門で働いていました。以前から途上国支援にも興味があったため、JICA海外協力隊の募集に応募し、2022年5月からベトナムに赴任しました。
現地で担当している業務は、病院で臨床をしつつ、同僚への臨床指導、訓練室の整備、訓練教材・評価用紙の作成、病院全体に向けた言語聴覚療法の啓発(勉強会の実施)など多岐にわたります。異なる文化や習慣、価値観の中、言語聴覚士として働くことで、これまでの常識が覆され、多くの学びに出会うことができました。
ベトナムでの活動を通して気づいたこと
ベトナムでの生活と活動は、私の中の常識とは異なることが、たくさん見つかる毎日でした。そのような日々を過ごしていると、無意識のうちに自分と異なる価値観や考え方に、上下や優劣をつけていたことに気づいたのです。そうした感情は、本当の意味で互いに理解しあうことを難しくしてしまうものです。
自らが持っている技術や知識を臨床の現場で最大限に生かしてもらうためには、まずこちらが相手を理解し、共に考え、理解してもらえるよう伝える姿勢が欠かせません。相手の考え方を否定せず、まずは「なぜそう考えるのか」を知ろうとすることから始める。遠回りのように見えますが、理解の上で身につけた知識や技術は、必ず力になると学びました。
価値観を理解することが、本心を知る第一歩
このような経験を通して、私が言語聴覚士として最も大切にしていること。それは、患者様やご家族様とのかかわりにおいても「相手の価値観を理解し、尊重すること」です。
価値観を理解することで、重要な意思決定の際にも表面上の言葉を鵜吞みにせず、真意を丁寧に確認する行動が起こせるようになります。例えば、ご本人の言語機能に適した方法での会話を重ねたり、本心を話せる相手を交えてお話することで、患者様が「自分の意志は反映してもらえない。」と感じてしまう可能性を少しでも軽減できるように努めています。
文化を超えて挑む二つの目標
言語聴覚士として、これから挑戦したいと思っていることが二つあります。ひとつはベトナムの言語聴覚療法のレベルアップに貢献することです。ベトナムは高齢化社会から高齢社会への移行スピードが、日本以上に早いと言われています。そのため、高齢化に伴う摂食嚥下障害への対応も急務です。現地では、まだまだ言語聴覚療法を系統立てて学んだ方は少ないので、彼らが育つまでの間を埋めるように貢献したいと考えています。
もうひとつは、日本国内の臨床に、異文化での経験を生かすことです。ベトナムに赴任する前、日本では、重症度の高い方の訪問リハビリや、お看取りの方の臨床に携わりつつ、地域の介護予防事業にも注力してきました。今後はベトナムでの臨床経験を生かして、日本でも多様な価値観や生き方を尊重しながら地域を支える、そんな臨床の発展をお手伝いしたいですね。そのためにも、私自身、引き続き勉強を重ねていかなくてはと思っています。
「どのように生活し、生きるか」に関われる仕事
言語聴覚士は、言語や記憶など、人が人として生きることに必要な機能へアプローチする、とても意義深く、素敵な仕事です。「声を出す・言葉を話す・飲み込む」といった心身機能の先にある、「患者様自身がどのように生活し、どのような人生を送るのか」という部分に深く関わることができるのです。
私は、JICA海外協力隊として活動する中で、言語聴覚士の仕事のやりがいは世界共通のものなのだと感じました。そうした気づきを与えてくれた協力隊の活動は、私にとってとても素敵な経験となっています。言語聴覚士は海外でも必要とされる職業です。JICA海外協力隊も将来の選択肢の一つになりうることを、知っていただければと思います。
ある一日のスケジュール
Schedule-
07:30朝のミーティング
※ソンラ省リハビリテーション病院でのスケジュールです。
・2022年6月~2024年5月 ソンラ省リハビリテーション病院で活動
・2024年7月~現在 ハノイリハビリテーション病院で活動 -
07:45~臨床準備
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08:00~臨床開始
臨床、同僚への指導、訓練資料の検討など
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10:30~科内向け勉強会実施
科内の同僚向けの実技を交えた勉強会
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11:30~昼休み
自宅に帰って家族と食事をとる人が多い。
ベトナムには、昼寝の習慣があります。 -
13:30~臨床準備
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14:00~臨床開始
臨床、同僚への指導、勉強会の資料作りなど
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16:30~病院全体向けの勉強会
院長や副院長を含め、他科の職員も含めた勉強会
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17:30業務終了
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