言語聴覚士インタビュー
1つの単語を引き出すだけでコミュニケーションは広がっていく
内田 千賀 博悠会温泉病院失語症の方が話しやすい環境づくりを心がける
私は現在、博悠会温泉病院にて、脳血管障害によって構音障害や失語症、高次脳機能障害、嚥下障害のある方を中心にリハビリを行っています。具体的には、呂律を回りやすくするための口の運動、言葉を発しやすくするための絵カードを用いたリハビリが挙げられます。
さまざまな分野でリハビリを行っていますが、なかでも失語症のある方を対象としたリハビリはコミュニケーションの可能性・重要性を実感できるいい機会となっています。
失語症の方は、たった1つでも言いたい単語を引き出す事ができれば、そこからコミュニケーションが広がる事があるからです。そのため、失語症の方が何を伝えたいのか、何を考えているのか、それを最大限引き出せるように、コミュニケーションの負担を軽くするサポート、さらには失語症のある方が言葉を伝えきるまで諦めないような環境づくりを心がけています。
たとえば、普段ご自身から話さない方であっても、根気よく会話する環境を作っていきます。「昨日、家族とご飯を食べにいった」と伝えたい方であれば、「ごはん」というキーワードをジェスチャーや言葉で伝えていただき、こちらは「いつですか?」「外食ですか?」「何をどこで食べましたか?」「家族と行きましたか?」などの質問で答えを絞っていきます。
このように、時間をかけているからこそお互いに意思疎通ができたときの喜びはひとしおですね。
難聴があるからこそ円滑なコミュニケーションを意識する
私は中等度の難聴があるため、両耳に補聴器を装用しながら勤務していますが、患者さんの声が聞き取れない、会議をはじめ大勢の人の会話が聞き取れないといったことも、しばしばあります。そのため、リハビリ中に患者さんの声が聞き取れない際は、同僚に対応を依頼しており、特に構音障害のある方のリハビリは苦労が伴います。ですが、患者さんとの信頼関係が築かれるうちに、言いたいことが徐々にわかってくる瞬間があるんです。加えて重要なこととそうでないことを分別しながら聞き、重要な事が聞き取れない時は遠慮せず聞き返すことで、少しでも円滑なコミュニケーションにつなげています。
同級生と団結して自主的に試験対策を行っていた学生時代
以前は小売業に従事していました。接客業は楽しくてやりがいを感じていたのですが、もっと人としっかり向き合う仕事に就きたいと思い、この仕事を選び専門学校に通いはじめました。
専門学校を卒業して、言語聴覚士として勤務しはじめて気づいたのは、当然ですが、小売業とは異なるなぁということです。言語聴覚士の場合、小売業とは異なり、患者さんのそれまでの人生やその後までを考えて接さなければならず、いちから勉強することばかりでした。
通っていた専門学校は同級生の結束力が強く、国家試験前となると自主的に対策グループを作って夜遅くまで勉強することもありましたね。ひとりで勉強するよりも、仲間と一緒に勉強するほうが壁も乗り越えやすかったです。
「やりきった」というゴールはない
この仕事は対人なので、「やりきった」というゴールはないと日々思っています。ただ、少しでも患者さんに寄り添ったケアをするために、患者さんや利用者さんから学び取っていく姿勢をもっていようと考えていますね。そして、自分の聴力維持のために健康管理をしっかりと行いつつ、言語聴覚士ができる、聴覚障害への支援方法を考えていきたいです。
ある一日のスケジュール
Schedule-
08:30出勤
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08:50~部内ミーティング
予定や重要伝達事項の確認
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09:00~リハビリ
通所リハビリ
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11:00~外来リハビリ
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12:00~カンファレンス(病棟)
多職種での情報共有
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12:30~休憩
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13:30~リハビリ
通所リハビリ
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16:00~外来リハビリ
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17:00~清掃、消毒業務
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17:30~書類業務、療法間やST間での情報共有
-
18:00退勤
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