【公式】めざせ!ST(言語聴覚士)

言語聴覚士インタビュー

言語聴覚士インタビュー

離島でSTを待つ患者様へ、
人生を豊かにするリハビリを

安田 勇之進 名瀬徳洲会病院
医療 成人 回復期 維持期 終末期 病院リハ 在宅リハ
安田 勇之進

学生時代に訪問リハビリの必要性を感じる

私は奄美大島にある名瀬徳洲会病院でSTとして働いています。
普段は入院患者の方や外来患者の方のリハビリを行っていますが、訪問リハビリやSTがいない離島への出張も行っています。
特に訪問や出張によるリハビリは、以前から必要性を感じていました。
学生時代、奄美大島の実家の近くに、失語症のある方が2人いたのですが、どちらも体に麻痺があり容易に移動できる状況ではありませんでした。
近くにSTがいる病院はなく、リハビリができる病院に行くには片道1時間はかかってしまいます。
結局、病院に行くための手段がなく、リハビリは行っていませんでした。「もしリハビリに行ければ、もっと症状が改善するのに……」と思い、ST側が患者様の元へ駆け付けられる体制を構築したいと考えるようになりました。
このような思いから、当院に来てからは訪問や出張業務に力を注いでいます。

限られた時間のなか知識と経験をフル活用して最善を尽くす

STがいない離島から応援要請が来るということは、STが必要とされている証です。
遠方への移動が大変なときもありますが、STの存在意義を実感すると同時にやりがいを感じています。
一方、STがいない病院や施設での対応には難しさを感じることもあります。専用のリハビリ器具がないだけでなく、専門知識を持った職員がいないため、我流で対応されている場合が多々あります。
そのため、こちらの見解を伝えて理解してもらうのは簡単ではありません。
初めて聞くリハビリ方法に半信半疑の方もおり、なかにはつい我流の方法に頼ってしまう場合もあります。
また本来であれば、患者様の様子を何日もかけてじっくり見たいところですが、出張の場合は時間が限られています。
短期間で何人もの患者様に評価を下さなければならないという難しさもあります。
そのような状況でも、「症状を改善するためにはどうしたらよいのか」と自分の知識や経験をフル活用し、目の前の患者様に対して真摯に向き合っています。

感謝の言葉にやりがい。同時に責任の重さも痛感

リハビリを行って回復した際、患者様やご家族の方から感謝の言葉をいただくことがあります。
特にSTが対応するケースの多い「嚥下障害」は食べたいけれど食べられない症状です。
そのため、リハビリで「食べられるようになりました」「元気になりました」と言ってもらえたときは、大変うれしく感じます。
ときには最期を迎える患者様に向き合うこともあります。
その際は、どれだけ患者様の食欲にアプローチできるかが私たちの役目です。
食欲は人間の大切な「欲」ですから、最後に少しでも食を楽しんでもらえたらと願いながら接しています。
最期を迎えるまでに患者様がどのように生きるのか、生き方に対するリハビリができるのもSTならではの仕事ですね。
嚥下障害の患者様に対しては、「食べられるようにする」のではなく「食べさせない」こともあります。症状によっては、食べることで肺炎を引き起こす場合もあるからです。
そのようなときは医師と相談しながら慎重に判断するのですが、見極めは難しく、最後のストップをかけるときは大変辛いです。
患者様の「食」を奪ってしまうと考えると、それだけSTの仕事の重さを感じます。

ST同士の横のつながりを構築し連携を深める

一口に「嚥下障害を診てほしい」と言われても、単純に症状だけで判断できません。
睡眠状況やどのような食べ方をしていたか、どのような姿勢で過ごしているのかなど事前情報が必要です。
ほかの病院へ応援に行った際には、限られた時間のなかで正確な診断を行うため、病院間で事前情報の共有ができるシステムの構築がこれからの課題だと感じています。
数年前からはST同士の横のつながりを作り、組織化を進めています。現在、奄美の離島には約20人のSTがいるのですが、日ごろから連絡を取り合うことで関係性の構築に努めています。
横のつながりがあれば、患者様が別の病院に移る際の情報共有やアドバイスなどを円滑に行うことができ、最善なリハビリを提供できるはずです。
また行政と連携し、STの存在を必要とする方の相談窓口としても機能していけたらと思っています。
遠方に住む方も安心してリハビリを受けられるよう、これからも体制を整えていきたいです。

患者様の人生をイメージしたリハビリができるSTになりたい

食事や言語機能をサポートするSTは患者様の人生や命に直結している仕事であり、責任を感じると同時に、やりがいも大きいです。
そしてSTとして患者様の人生に携われることを非常に喜ばしく思います。
私が目指すSTの在り方は、たとえば嚥下障害の方に対してなら、嚥下という症状だけを診るのではなく、患者様の生活全体をイメージしながらリハビリを行えるようになることです。
リハビリを通して人生が豊かになるお手伝いができるよう、これからも患者様に向き合い続けていきます。

ある一日のスケジュール

Schedule
  • 08:30
    全体朝礼
  • 08:45~
    リハビリ朝礼、カルテチェック
  • 09:00~
    リハビリ
  • 13:30~
    休憩
  • 14:30~
    リハビリ
  • 17:00
    カルテ記載

    月2~5回の他病院へ応援
    週1日訪問リハビリ