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言語聴覚士インタビュー

言語聴覚士インタビュー

患者様の退院を見据えた
「食生活の再建」を目指して

鈴木章吾 永生病院
医療 回復期 維持期 病院リハ
鈴木章吾

患者様の退院を見据えた「食生活の再建」を目指して

当院は急性期・回復期・生活期の機能を有したケアミックス型の病院ですが、私は医療療養病棟・介護療養病棟に言語聴覚士として勤務しています。特に医療療養病棟では内科的疾患・脳血管疾患・神経難病・悪性腫瘍などにより摂食嚥下障害を呈した患者様が多くいらっしゃいます。日々の臨床の大半はそのような患者様へのリハビリテーションが中心となっています。昨今の地域包括ケアシステムの推進に伴い、自宅や在宅系施設への退院支援が求められています。嚥下機能改善や経口摂取再獲得はもちろん、その患者様が退院していく先々に応じて食事内容や介助方法を調整し、いわば「食生活の再建」を意識して臨床を行っています。

医療然りとするのではなくQOLを視点とした関わり

医療療養病棟には病状によっては疾患治療を行いながら長期に入院療養をされる患者様もおり、なかには当院で最期を迎える方もいらっしゃいます。「一口だけでもいいから食べたい(食べさせてあげたい)」と、患者様やそのご家族から希望されることが多くあります。経口摂取が困難であり普段は代替栄養を余儀なくされているケースであったとしても、医師・看護師・ご本人・ご家族などとやりとりを十分に重ねながら、経口摂取の機会を少しでも提供できるようにしています。その際には、「何を、誰と」食べるのかといった視点を大事にしています。好きな食べ物は何か、ご家族やご友人のなかでどのような存在だったのか、これまでどのような生活を送ってきたのか、といったことも把握して、時にはご家族・ご友人とコミュニケーションを交えながら一緒に食べることができる時間を提供しています。

「人生を変えてくれて、本当にありがとう」という言葉が何よりの励み

私が療養病棟に配属されてすぐに、約5年間経管栄養で経過している患者様を担当させて頂く機会がありました。交通事故に伴う頭部外傷後に重度摂食嚥下障害を呈していましたが、「何とか口から食べられるようになってほしい」とご家族は強く望まれており、そのお気持ちに応えるべくリハビリテーションを続けました。当初は「長い間食べられていないのに無理だろう」、「肺炎でも起こしたらどうするんだ」と疑心暗鬼の声も周囲から聞かれましたが、変化が見られ始めたのはリハビリテーションを始めてから1年ほどしてから。少しずつ経口摂取ができるようになり、更にしばらくすると長年に渡って行っていた経管栄養から離脱できるように。加えて、気道管理のために留置していたカニューレも外すまでに回復することができたのです。結果、特別な医療処置の必要がなくなり在宅系施設へ退院され、その際にご家族から「あなたは人生を変えてくれた。本当にありがとう。」と涙ながらに言われたことが今でも忘れられません。そしてそれが今でも励みとなっています。

コミュニケーションを常に大事に

現在、私は70名前後の患者様を担当しています。患者様に関する基本的情報や経過は把握しようと努力していますが、見逃してしまうこともあります。「そのせいで対応が遅れてしまった…」ということが起こらないようにするため、常に大事にしていることが病棟の看護師や介護福祉士などとのコミュニケーションです。「この間、こんなことがあって…」「この場合にはどうしたらいいか」などといった食事にまつわる疑問にはすぐにフィードバックし、また対応が遅れないように何かあればすぐに声をかけてもらえる関係性づくりを心がけています。また私は普段リハビリテーションを通して患者様と関わることが主ですが、その時間は限られており、患者様と多くの時間を共にしているのは病棟の看護師や介護福祉士です。リハビリテーションでできるようになったことを病棟での生活にどう反映させていくかが重要であり、難しいところでもあります。それを解決する方法もコミュニケーションであり、病棟看護師と介護福祉士との協力は必要不可欠です。

言語聴覚士になるきっかけは大学で所属したゼミ

私は大学で法学を専攻しており、所属したゼミでは「障害者自立支援法」を専門に知識を深めていきました。このゼミでは様々な病院・施設に見学に伺わせて頂くことがあり、その先で言語聴覚士の存在を初めて知りました。それまで聞いたことも見たこともない職業でしたが、コミュニケーションや食べることといった「人間の本質」に関わることができることに魅力を覚え、一念発起して言語聴覚士を志すようになりました。

養成校に入学するための試験対策は独学

大学4年のときに言語聴覚士を志して、大学卒業後2年間養成校に通いました。養成校には試験を受けて入学するのですが、受験勉強は完全に独学。志望していた養成校の試験科目には英語・一般教養・小論文があり、どれも私にとっては難しいものでした。医療系大学の赤本や参考書、また新聞の社説を使って勉強しました。養成校に入学してからも大変なことは続き、講義・試験・レポート・実習などに追われる日々。そのなかでも一番苦労したことが国家試験。私はもともと暗記が得意ではないのですが、暗記しなければならないこともたくさんあり、その苦労は今でも思い出します。

目指す言語聴覚士像は「スペシャリストでありながらジェネラリスト」

摂食嚥下障害領域には多くの職種が関わるようになってきていて、関心も高まってきています。また診療報酬改定などの言語聴覚士を取り巻く状況も刻々と変わっていくことが予測され、摂食嚥下障害領域における言語聴覚士の参画の仕方も変わってきます。そのなかで一番大事なことは患者様が困らないことであり、それには病院・在宅サービスの垣根を越えた医療サービスの結集が必要です。私が理想とするのは、「スペシャリストでありながらジェネラリスト」。言語聴覚士としての専門性を常に貪欲に磨き上げていくことはもちろん大切ですが、それを基本として他の職種と建設的なやりとりができる広い視野を養っていくこともまた大切と考えています。

ある一日のスケジュール

Schedule
  • 08:30
    出勤 事務作業
  • 08:55~
    朝礼・病棟申し送り
  • 09:10~
    リハビリ
  • 13:00~
    休憩・昼食
  • 14:00~
    リハビリ
  • 16:00~
    事務作業
  • 16:30~
    ミーティング・勉強会
  • 17:30
    退勤