言語聴覚士の仕事内容
ST(言語聴覚士)は普段どういう仕事をしているのでしょうか。
話す、聞く、食べる、のスペシャリスト。
話す、聞く、表現する、食べる・・・。誰でもごく自然に行っていることが、病気や事故、加齢などで不自由になることがあります。また、生まれつきの障害で困っている方もいます。
こうした、ことばによるコミュニケーションや嚥下に問題がある方々の社会復帰をお手伝いし、自分らしい生活ができるよう支援するのが言語聴覚士の仕事です。
医療分野はもちろん、教育、福祉の分野にも活動の場が広がりつつあります。
コミュニケーションや食べる障害に対応
脳卒中後の言語障害(失語症、構音障害)や聴覚障害、ことばの発達の遅れ、声や発音の障害など、ことばによるコミュニケーションの問題は多岐にわたります。
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言語障害
上手く話せない
話が理解できない
文字が読めない -
音声障害
喉頭がんなどで
声帯を失い
声が出にくい -
嚥下障害
上手に噛めない
上手く飲み込めない
言語聴覚士はこうした問題の本質や発現メカニズムを明らかにし、対処法を見出すために検査・評価を実施。必要に応じて訓練、指導、助言、その他の援助を行う専門職です。さらに医師や歯科医師の指示のもと、嚥下訓練や人工内耳の調整なども行います。
詳しく知りたい方はこちら
コミュニケーションの問題
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成人
必要とされる 言語聴覚士を目指して
伊藤 美由貴さん医療法人社団KNI 北原リハビリテーション病院 -
小児
上司や先輩のサポート、自分の努力で成長できた
小渡 結佑さん奈良県総合リハビリテーションセンター
飲み込みの問題
コメディカルスタッフとして活動
言語聴覚士によりリハビリテーション医療は、医師・歯科医師・看護師・理学療法士・作業療法士など医療専門職、ケースワーカー・介護福祉士・介護援助専門員などの保健・福祉専門職、教育、心理専門職などと連携し、チームの一員として行われます。
医療、保健・福祉、教育分野などで活躍
言語聴覚士は医療機関だけでなく、保健・福祉機関、教育機関など幅広い領域で活躍。ことばや聴こえに問題をもつ方とご家族をやさしく支援します。
一日に密着
Schedule-
8:30
今日の患者さんの状態について情報伝達を行います。リハビリテーション関連職種の理学療法士、作業療法士と共に参加し、得られた情報は本日の訓練に反映していく重要な会議です。
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9:30
失語症とは言葉の理解と表出が困難になる障害です。カードに描かれた絵をみて、その物の名前を言う選ぶ訓練などを行います。
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11:00
構音障害とは唇や舌など、発声・発音器官の障害です。STの口の形を真似して声を出す訓練や、文章を音読する訓練を行います。
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12:00
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13:30
摂食・嚥下(えんげ)障害とは食べ物をうまく食べたり飲み込んだりできなくなる障害です。水やゼリーや実際のご飯を使用して訓練を行います。
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15:00
高次脳機能障害とは脳の損傷によって、言語、思考、記憶、行動、学習、注意などに障害が起きた状態です。記憶や注意など多様な症状に合わせた機能訓練や生活訓練などが行われます。
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16:30
訓練を実施した患者さんの診療記録を作成します。検査結果のまとめや訓練プログラムについて検討したり、本日の訓練を振り返り、明日への準備を行います。
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17:30
新たな知識や技術について情報の交換を行い自己研鑽に励みます。
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18:30
病院勤務の場合、託児所が併設されていることが多く、勤務中は子供を預けることができます。夜勤もないので、そのまま子供と一緒に帰宅します。
ST(言語聴覚士)は女性に向いている!?
言語聴覚士は「きこえ」「ことば」「高次脳機能障害」「嚥下」に障害のある方を支援する職業です。
対象は、お年寄りや幼児、後遺症で悩む方々など様々であり、思い通りに言葉を発してコミュニケーションを図ることが難しく、もどかしい気持ちでいる場合がほとんどです。患者さんと接するには、知識や技術はもちろんのこと、観察力や想像力、患者さんに的確に伝えるための表現力が必要です。また、常に冷静に接し、適切な信頼関係を築くことも必要となります。患者さんの思いを受け止めることのできる、豊かな人間性が大切になります。このような点から言うと、細やかな気遣いと優しさ、豊かな包容力と感受性など女性ならではの特性や経験が活かせる職業です。
また、職場環境も夜勤はなく、就業時間が規則的であることや産前・産後休暇・育児休暇の活用、託児所を併設している施設も多い点などから結婚後も長く仕事が続けられるのも魅力的です。
言語聴覚士は国家資格であるため、一時的に職を離れる時期があっても再就職は比較的容易であり、これまでの経験を次のステージに活かせるのも特徴です。
言語聴覚士の職能団体である日本言語聴覚士協会の調査では会員の約80%が女性であり、女性でないと就けない仕事に思われがちですが、男性も貴重な存在として各領域のスペシャリストとして活躍しています。
言語聴覚士の仕事内容について
言語聴覚士が対象とする障害は多岐に渡ります。
それぞれの障害に対して、言語聴覚士がどのような訓練・指導・サポートを行っているのか、その仕事内容を解説していきます。
- 1.「聞こえ」の障害に対して 「聞こえ」障害とは、具体的には「伝音性難聴」や「感音性難聴」などを指します。 聞こえの障害(聴覚障害)のある方を相手に、検査や訓練、補聴器のフィッティングなどを行います。 対象が言語獲得期にある幼児の場合は、「ことばの獲得」もサポートします。
- 2.「話すこと」の障害に対して 「話すこと」の障害とは、具体的には「構音障害」や「吃音(きつおん)」などを指します。 声帯や舌、唇などを使って話す動作を「構音」といいます。この発声発音器官に障害がある構音障害や、声に異常が発 生する音声障害、流暢に話すことが難しい吃音(きつおん)なども、言語聴覚士による評価・訓練の対象となります。
- 3.「食べること」の障害に対して 「食べること」の障害とは、具体的には「摂食・嚥下(えんげ=飲み込むこと)障害」などを指します。 食べ物が口からこぼれる、うまく飲み込めない、むせる、といった摂食・嚥下(えんげ)障害に対して、原因の調査と、 「咀嚼して、飲み込む」ために必要な器官の運動訓練や、飲み込む反射を高めるための訓練を行います。
- 4.「ことばの遅れ」に対して 「ことばの遅れ」とは、具体的には、子どもの発達障害などを指します。 知的発達の遅れ、対人関係の障害、脳の損傷などにより、言語機能の発達が遅れている子どもに対して語聴覚士は、「こ とばやコミュニケーションに関心を持たせる」、「語彙や文法、文字の習得を促す」などの訓練・指導を行い、「こと ばの獲得」をサポートします。
- 5.「成人の言語障害」に対して 「成人の言語障害」とは、具体的には「失語症」や「記憶障害」、「認知症」などを指します。 失語症は、脳卒中や交通事故などによる脳外傷などが原因で起こる、成人の後天的な言語機能障害で、伝えたい内容を 単語や文で表現したり、単語や文の意味を理解することが困難になる障害です。 また、失語症以外の「高次脳機能障害(記憶障害や認知症)」に対しても、言語聴覚士は患者さん一人ひとりの症状や 発生メカニズムを把握し、それに対応したプログラムを組み立てて訓練を行います。